同人誌
別表記: doujinshi, 同人, どうじんし, 同人即売会, コミケ本
同人誌は、商業出版の外で作られ、即売会などで作り手自身の手から直接売られる自費出版の本です。マンガとは限らず、小説、評論、画集も含みます。内容はオリジナル(創作)と二次創作の両方があります。
定義しているのは中身ではなく出し方
同人は志を同じくする人の集まり、誌は刊行物です。合わせれば、ある集まりが自分たちの理由で 出す刊行物、という意味しかありません。マンガであることも、ジャンルも、内容も、語そのものは 何も指定していません。小説も、評論集も、画集も、ゲーム攻略も、音楽のライナーノーツも同人誌 です。定義しているのは一点だけ——誰にも発注されておらず、誰の承認も要らなかったということ。
集まりの単位はサークルと呼ばれ、20人のこともあれば、20人いそうな名前を名乗る1人のことも あります。
英語の doujinshi は意味が狭くなっている
日本語話者には意外なところですが、英語圏に渡った doujinshi は「二次創作、それも成人向け」 という含みを強く持ちます。英語の解説記事が同人誌をアダルト同人とほぼ同義に扱うことも珍しく ありません。海外の読者や、海外向けに自作を説明する場面では、この語の重心がずれていることを 前提にしたほうが話が早い。原作つきでないなら original doujinshi、あるいは self-published comic と言い換えたほうが正確に伝わります。
創作と二次創作
文化の側が引いている線は創作(オリジナル)と二次創作です。二次創作のほうが量も可視性も 大きく、法的にはグレーゾーンに置かれています。形式上は権利侵害でありながら、権利者が動く ことはほとんどありません。この場が無償の宣伝として、才能の供給源として、そして単行本の間 にファンダムが声を出し続ける手段として機能しているからです。ガイドラインを明文化した出版社 もありますが、それは容認であって許諾ではなく、境界は法律ではなく慣習として引かれています。
オリジナルだけを扱う即売会としてはコミティアがあり、同人の場を「作られている場所」として 見たいならそちらが分かりやすい。
作る側の技術として何が残るか
同人誌は、自主出版の実務モデルとしては最も完成度が高い。短い部数、イベント日という動かせ ない締切、読む人との直接の接触、そして門番の不在。
印刷しない人でも真似する価値のある習慣が2つあります。1つは、締切が外部にあって動かせない こと。これが無限に手を入れ続ける問題を終わらせます。もう1つは、自然な単位が20〜40ページの 完結した読み切りになること——完成できる程度に小さく、物語として 成立する程度に長い。この2つは商業の現場が要求する能力とそのまま重なります。
関連用語
- 漫画(manga) — 日本語の漫画はコミック全般を指す普通の言葉ですが、英語の manga は「日本の様式で作られたコミック」という狭い意味しか持ちません。漫画・만화・漫畫は同じ二字を三か国語で読んだもので、語そのものには国も様式も含まれていません。
- 読み切り — 読み切りは、前後の話を持たない1回完結のマンガです。日本の雑誌では新人と新企画の審査を兼ねており、その設定とキャストが連載を支えられるかを、連載を始める前に読者の反応で測る仕組みになっています。
- 四コマ漫画 — 四コマ漫画とは、ほぼ同じ大きさの四つのコマを縦一列に積み、上から下へ読ませる形式です。四つの拍は起承転結に対応し、対立の解決ではなく読者の見え方が切り替わることで落ちがつきます。