女性漫画(josei)
別表記: josei, 女性向け漫画, 女性誌, レディースコミック, レディコミ
女性漫画は、成人女性向け雑誌に掲載される漫画を指す読者層区分で、英語圏では josei と呼ばれます。仕事、お金、結婚、欲望を大人の視点から扱いますが、英語の書店では少女漫画と一括りにされがちです。
英語圏で shojo と呼ばれてしまう理由
日本では掲載誌を見れば一目で分かる区分が、海外ではほぼ機能していません。理由は4つ重なって います。
- 英語圏の棚は読者の性別で分け、年齢で分けない。 「少女マンガ」の棚が1つしかない書店 では、30代の建築士の離婚話もそこに入ります。
- 作家が重なっている。 女性誌の作家の多くは少女誌出身で、絵柄を そのまま持ち込んでいます。中身が違ってもページは見慣れたものに見えます。
- 掲載誌が見えなかった。 『FEEL YOUNG』『Kiss』『ココハナ』『YOU』——この区分を実際に 定義している唯一の信号が、英語圏の読者にはほとんど届きませんでした。
- アニメ化でさらに均された。 『のだめカンタービレ』も『海月姫』も『Kiss』掲載ですが、 海外では単にロマンティック・コメディとして売られました。
逆にいえば、英語の josei は掲載誌区分ではなくジャンル名として流通しています。「大人の女性 が主人公の、現実寄りの恋愛もの」くらいの意味で使われることが多く、日本語の「女性漫画」より 狭い。海外向けに自作を説明するときは、この語がジャンル期待を連れてくる前提で使うことになり ます。
ページの上で実際に違っていること
恋愛が始まる場所が違う。 少女漫画の弧は告白で閉じることが多い。女性漫画は関係がすでに ある状態から開いて、それが何を要求するかを問います——転勤、まだ近くにいる元恋人、共同名義の 賃貸、子ども。
お金がページに出てくる。 家賃、給料、自分ではない誰かが受けた昇進。経済的圧力が物語の エンジンとして常用されます。少年漫画では資源はほぼ抽象のままです。
顔が観察寄りに描かれる。 目は小さめ、頭身は大人寄り、年齢が読める。少女漫画は意図的に 理想化し、女性漫画はおおむねしない。出来の悪い模倣で最初にばれるのは、16歳の顔をした成人 キャラです。
一人称の回想が多い。 描かれている場面を、年上の声が後から見ている形。枠なしの地の文や キャプションボックスに置かれ、報告ではなく論評をします。
青年漫画との差
青年漫画は成人男性向けの対応区分で、正直に言えば両者は近い。どちらも 曖昧さを許し、失敗を許します。実務的な差は、葛藤をどこに置くかです。青年誌は制度と仕事の側に 置くことが多く、女性誌は関係と家庭の側に置いて、仕事はそこに圧をかけてくるものとして扱う ことが多い。どちらも法則ではありません——職場ドラマの女性漫画はいくらでもあります——が、傾向 は実在し、同じ発想が『モーニング』と『FEEL YOUNG』で別の作品になる理由になっています。
関連用語
- 少女漫画 — 少女漫画とは、おおむね12〜18歳の女性読者向け雑誌に連載されるマンガを指す、出版上の読者区分です。題材ではなく読者層で決まる区分でありながら、この雑誌群がマンガ史上もっとも独自なページ文法を生み出しました。
- 青年漫画 — 青年漫画とは、おおむね18歳以上の男性読者向け雑誌に連載されるマンガを指す、出版上の読者区分です。少年漫画との差は過激さではなくテンポと倫理の確からしさにあり、青年誌は主人公が失敗したまま間違い続けることを許します。
- 少年漫画 — 少年漫画とはジャンルではなく出版上の読者区分で、おおむね12〜18歳の男性読者向け雑誌に載るマンガを指します。決めているのは内容ではなく掲載誌であり、少年誌はアクションもスポーツもギャグもホラーも恋愛も等しく載せます。
- 日常もの — 日常ものとは、外部からの脅威ではなく、学校・仕事・食事・友人関係といった普段の生活から物語を取り出すジャンルです。葛藤は小さく個人的で、結末は世界ではなく関係のほうを少しだけ変えます。