キャプションボックス
別表記: キャプション, ナレーションボックス, ナレーション枠, caption box, 地の文
キャプションボックスは、吹き出しとは別に置かれる文字の枠で、ナレーション、心内語、場所と時刻の表示を載せます。コマの中の誰も声に出していないため、しっぽは付きません。日本のマンガでは枠で囲まず地の文として置くことも多い要素です。
囲うか、囲わないか
英語圏のコミックでは、ナレーションは角の立った四角い枠に入れてコマの隅に置くのが標準です。 日本のマンガはそうではありません。同じ内容を枠なしの地の文としてコマの余白に直接置くか、 コマの外の余白に流すことのほうが多い。枠で囲うと画面が硬くなり、絵の上に一枚レイヤーが 乗った感じが出るからです。
どちらを選んでも、決めるべきことは同じです。囲いは見え方の選択で、以下はそれ以前の問題です。
その声は誰のものか
ナレーションは必ずどこかから来ています。書く前に1つだけ答えてください。読者は誰の頭の中 にいるのか。 正直な答えは数種類しかなく、それぞれ振る舞いが違います。
- 一人称・回想 — 後から本人が語っている形。ドアに着いたときには、彼女はもういなかった。 体温があり主観的で、語り手が生き延びたことを含意します。
- 一人称・現在 — 行動と並走する内なる声。思考の吹き出しに かなり近いが、時間を圧縮したり論評したりできる点が違います。
- 三人称・神の視点 — 外部の語り手。硬質で、読者を一人の人物に縛らず、むしろ距離を作ります。
- 場所と時刻の表示 — ソウル、三年前。 これは声ではなくラベルです。
失敗の形はいつも同じで、同じページの中で種類が入れ替わることです。1コマ目が一人称回想、 4コマ目が神の視点だと、読者は理由を言葉にできないまま足元が動く感覚だけを受け取ります。 1つの流れにつき1種類を選び、最後まで保ってください。
吹き出しとの違い
吹き出しは他の登場人物に聞こえています。ナレーションは聞こえて いません。配置の問題はほぼこの一点で片付きます。ナレーションは顔の上に置けるし、 間白をまたげるし、語り手がいないコマにも出せるし、別の場所で起きて いることを語れます。吹き出しにはどれもできません。
しっぽの代わりに帰属を担うのは、たいてい色か囲いの形です。探偵は薄い黄、敵役は淡い青、と 決めておけば、同じ場面に2つの内なる声を流しても説明が要りません。読者は2、3回で覚えます。
効く場所と、効かない場所
ナレーションが本当に役立つのは、絵では出せないものです。経過時間、表情と食い違う内面、読者 には要るが誰も自然には口にしない情報。時間の飛躍を4文字で処理するほうが、そのために 引きのコマを1つ使うより速い。
最悪なのは、演出の代用として使うことです。張り詰めた部屋の絵の上に部屋は張り詰めていたと 書けば、どちらか一方は無駄になります。無駄になるのは絵のほうではありません。新聞連載時代の、 コマの上に状況説明を載せる習慣が絶えたのは正確にこの理由です。
スマートフォンでは利点がもう1つあります。縦スクロールでは、 コマとコマの間の空白に文字だけを単独で浮かべ、無地の色の上でナレーションの一拍を持たせる ことができます。紙にはこれに相当するものがありません。
関連用語
- 吹き出し — 吹き出しとは、コマの中で人物が声に出したセリフを収める枠のことです。話者を指すしっぽが付き、読者はコマの読み順どおりに吹き出しを拾うため、置き場所がそのまま「誰が先に聞こえるか」を決めます。
- 思考の吹き出し — 思考の吹き出しとは、声に出していない心の中の言葉を入れる、雲形の輪郭を持つ枠のことです。話者とは尖ったしっぽではなく、小さくなっていく丸の連なりでつながります。マンガでは雲形を使わず枠なしの文字で処理するのが普通です。
- コマ — コマとは、物語の一瞬を切り取った枠付きの一画のことです。枠が「その瞬間はここで終わる」と示し、コマの面積が読者の滞在時間を決め、コマの並びがそのまま時間の流れになります。
- エスタブリッシングショット — エスタブリッシングショットは、場面の場所と人物の配置を示す引きのコマです。寄りに入る前にこれを置かないと、読者は続く寄りのコマを一つの空間に並べられなくなります。