吹き出しのしっぽ
別表記: しっぽ, 尻尾, ツノ, bubble tail, balloon tail, 吹き出しの口
しっぽは、吹き出しから話し手に向かって伸びる尖った部分で、そのセリフが誰のものかを指定する唯一の要素です。しっぽが別人を指していると、読者は疑わずにその人物のセリフとして読み進めます。
話し手を名指しする唯一の要素
マンガには「とミラは言った」がありません。誰のセリフかは、数ミリの三角形だけが担っています。 ページの他の要素は後からいくらでも調整できますが、しっぽの向きを間違えると誰が喋ったかが 変わります。しかも読者は疑いません。別の人物のセリフとして読み、矛盾が出るまでその誤解を 持ち歩きます。
だからこれは他のどんな写植ミスよりも重い。形の悪い吹き出しは素人くさく見えるだけですが、 向きの違うしっぽは場面そのものを書き換えます。
胴ではなく頭を指す
しっぽは話し手の口か頭に向けます。胸でも肩でも「だいたいその辺」でもありません。二人が 寄っているコマでは、一方の肩を指すのと他方の顎を指すのは数ピクセルの差ですが、読者は毎回 「頭に近いほう」で解釈します。しっぽは短く、まっすぐに。コマを横断して曲がりくねる長い しっぽを描くくらいなら、吹き出しのほうを動かしてください。
他に守ると効く原則。
- しっぽを交差させない。 2本が交差するのは吹き出しの並び順が逆だという意味です。入れ替え れば読む順番もだいたい一緒に直ります。
- 人物の上を通さない。 顔の上をしっぽが通ると、その顔が喋っているように読めます。
- 1つの吹き出しに1本。 2本付いた吹き出しは、2人が同じ言葉を同時に言っている意味になり ます。実在する演出なので、事故で発生させてはいけません。
コマ外・画面外の話し手
話し手がコマの中にいないとき、しっぽは指し示す線になります。まっすぐで細めの突起をコマ枠 まで伸ばして止める形です。声がその方向の枠外から来ていることを示します。枠の外まで突き抜け させると、場面のもっと遠くから聞こえている感じになります。
覚えておくと使える変種。
- 電話・無線・スピーカー — ギザギザ、または途切れたしっぽ。吹き出し自体も角張った形に 合わせます。
- 発生源が特定できない声 — しっぽを付けない。身体を持たない声として読まれ、神、システム、 その場にいる語り手に使われます。
- 連結した吹き出し — 1人のセリフを複数の吹き出しに分け、細い首でつなぐ形。しっぽが要る のは先頭の1つだけで、残りはそれを引き継ぎます。長いセリフを読める塊に割っても、コマが しっぽだらけにならない方法です。
思考の吹き出しには尖ったしっぽを付けません。小さくなっていく 丸の連なりがその役をします。キャプションボックスには、そもそも コマの中の誰も声に出していないので、しっぽは一切付きません。
関連用語
- 吹き出し — 吹き出しとは、コマの中で人物が声に出したセリフを収める枠のことです。話者を指すしっぽが付き、読者はコマの読み順どおりに吹き出しを拾うため、置き場所がそのまま「誰が先に聞こえるか」を決めます。
- 思考の吹き出し — 思考の吹き出しとは、声に出していない心の中の言葉を入れる、雲形の輪郭を持つ枠のことです。話者とは尖ったしっぽではなく、小さくなっていく丸の連なりでつながります。マンガでは雲形を使わず枠なしの文字で処理するのが普通です。
- キャプションボックス — キャプションボックスは、吹き出しとは別に置かれる文字の枠で、ナレーション、心内語、場所と時刻の表示を載せます。コマの中の誰も声に出していないため、しっぽは付きません。日本のマンガでは枠で囲まず地の文として置くことも多い要素です。
- コマ — コマとは、物語の一瞬を切り取った枠付きの一画のことです。枠が「その瞬間はここで終わる」と示し、コマの面積が読者の滞在時間を決め、コマの並びがそのまま時間の流れになります。