吹き出し

別表記: フキダシ, セリフ枠, バルーン, speech bubble

吹き出しとは、コマの中で人物が声に出したセリフを収める枠のことです。話者を指すしっぽが付き、読者はコマの読み順どおりに吹き出しを拾うため、置き場所がそのまま「誰が先に聞こえるか」を決めます。

配置がセリフの句読点になる

吹き出しは同時に二つの仕事をしています。言葉を運ぶことと、それをいつ読むかを指示することです。 初心者が落とすのは二つ目です。コマの中の吹き出しはページと同じ方向に読まれます。日本のマンガなら 右上から左下へ、縦組みのセリフは右の行から。つまり吹き出しの物理的な位置が、そのまま会話の 手番です。返事を、それが答えている行より右上に置けば、脚本がどう書かれていようと会話は 逆再生されます。

確実な習慣は、最初の話者の吹き出しをコマの右上に置き、そこから左下へ階段状に降ろすこと。二人が 三往復する必要があるなら、それはたいてい「この場面はコマ二つ分だ」という合図です。

顔にかぶせない

写植でいちばん多い失敗は、そのコマが存在する理由そのもの──たいていは顔、時にナイフを握った手── の上に吹き出しが停まっていることです。絵とセリフが同じ矩形を取り合っていて、勝つのは必ず 文字のほうなので、作画者はレイアウトの段階で逃げを作っておく必要があります。

実践的には、コマのラフを切るとき、人物より先に吹き出しを空の形として置く。その塊で潰れた状態でも 構図が成立するなら、写植は必ず収まります。ネームはまさにこのために あります。

文字数は好みではなく形式の制約

印刷されたページは物理的に大きく、目を休ませられるので、長い吹き出しにも耐えます。スマホは 耐えません。縦スクロールのウェブトゥーンでは、1吹き出しあたり 20〜30文字がおおよその上限です。それを超えると、文字が読める大きさを割るか、吹き出しが コマを飲み込むかのどちらかになります。印刷のページなら50文字前後まで伸ばせますが、50文字は すでにかなり多い。

入らないときの対処は、優先順位の高い順に──削る、細い首でつないだ二つの吹き出しに割る、説明を ナレーション枠に移す。級数を落とすのは選択肢に入りません。

形が声質を運ぶ

輪郭そのものが情報です。なめらかな楕円は普通の発声。ギザギザに尖った輪郭は叫び、または 電話・無線越しの声。細く波打つ線はささやきか、消えかけている人物。角の立った四角はたいてい 機械音や電子音声に読まれます。読者はこの約束事を習わずに覚えているので、うっかり破ると効果では なくミスとして読まれます。

唯一、装飾になり得ない要素がしっぽです。コマの中で話者の名前を 告げているものは、それしかありません。

関連用語

  • 吹き出しのしっぽ — しっぽは、吹き出しから話し手に向かって伸びる尖った部分で、そのセリフが誰のものかを指定する唯一の要素です。しっぽが別人を指していると、読者は疑わずにその人物のセリフとして読み進めます。
  • 思考の吹き出し — 思考の吹き出しとは、声に出していない心の中の言葉を入れる、雲形の輪郭を持つ枠のことです。話者とは尖ったしっぽではなく、小さくなっていく丸の連なりでつながります。マンガでは雲形を使わず枠なしの文字で処理するのが普通です。
  • キャプションボックス — キャプションボックスは、吹き出しとは別に置かれる文字の枠で、ナレーション、心内語、場所と時刻の表示を載せます。コマの中の誰も声に出していないため、しっぽは付きません。日本のマンガでは枠で囲まず地の文として置くことも多い要素です。
  • コマ — コマとは、物語の一瞬を切り取った枠付きの一画のことです。枠が「その瞬間はここで終わる」と示し、コマの面積が読者の滞在時間を決め、コマの並びがそのまま時間の流れになります。

実際に使う