コマ
別表記: コマ, 駒, コマ割り, panel
コマとは、物語の一瞬を切り取った枠付きの一画のことです。枠が「その瞬間はここで終わる」と示し、コマの面積が読者の滞在時間を決め、コマの並びがそのまま時間の流れになります。
コマは「絵」であると同時に「長さ」である
コマは二つの仕事を同時にしています。一瞬を見せることと、時間を使うことです。小さなコマに読者が 与えるのは一秒ほど、横長の大きなコマには数秒。ここが要点で、「ゆっくり読め」と指示しているのは 絵の中身ではなく面積です。
だからページを割るときの最初の問いは「ここに何を描くか」ではなく「ここに何秒使わせるか」に なります。拳が当たる瞬間は細いコマが向いています。細いコマは速く読まれ、速さがそのまま衝撃に なるからです。逆に、何かに気づく顔には横幅が要ります。視線が移動する距離が、そのまま時間として 体感されます。
コマ数がページの呼吸を決める
- 1ページ3〜4コマ — 重く、間があり、劇的な山場の標準。
- 5〜6コマ — 会話のテンポ。多くの連載作品の基本値。
- 8コマ以上 — ギャグの間合い、モンタージュ、速い掛け合い。ただし各コマを単純にしないと ページが壁になります。
初心者が最もよくやるのは、一話まるごと同じ大きさのコマで通すことです。これは中立ではなく 「平坦」に読まれます。すべての場面に同じ重みを与えてしまうからです。大きさに差をつけるだけで、 一文字も読まれる前にページにリズムが生まれます。
コマは映画のショットではない
ショットの長さは編集者が決めますが、コマの長さは読者が決めます。一分見つめることも、飛ばすことも できる。だから本当に大事なものは飛ばせない形にしておく必要があります。大きく、中央に、 あるいはそのコマだけにセリフを置く。
コマ=枠でもありません。枠のないコマはごく普通にあります。マンガで枠を外したコマは、多くの場合 回想・夢・その場の時間から外れた瞬間として読まれます。枠を落とすのは装飾ではなく、 語りの判断です。
実際のページで生き残る四つのルール
- 1コマ1情報。 二つのことが起きるなら、コマは二つ必要です。
- 読み順を迷わせない。 同じ段の中の間白は、段と段のあいだの間白より 狭く取る。そうすれば視線は段を読み切ってから下に降ります。
- 会話中はイマジナリーラインを守る。 あるコマで右を向いていた人物は次のコマでも右向きに。 でないと読者は二人が入れ替わったと判断します。
- 写植を見越して構図を取る。 顔を枠の上端に寄せると、あとから吹き出し とぶつかります。必要になる前に余白を空けておく。
縦スクロールでも理屈は同じですが、一点だけ変わります。読者が 一度に見るのはほぼ1コマなので、ページ単位の構成が消え、間白がさらに多くのタイミングを背負う ことになります。
関連用語
- 間白(ガター) — 間白は、コマとコマの間の空白です。読者はその空白で2つの絵の間に何が起きたかを補完するため、間白の広さがそのまま飛ばした時間の量と、一拍をどれだけ持たせるかを決めます。
- コマ間の転換 — コマ間の転換とは、あるコマから次のコマへ渡るときに時間・空間・被写体がどれだけ動くかという関係のことです。スコット・マクラウドは瞬間・動作・主体・場面・側面・無関係の六種に分類しました。
- 扉絵・見開き — 1ページ全体を一コマで使う見せ方のことです。一つの瞬間にページを丸ごと払うため、話の扉、初登場、場面で最も大きいビート──つまり読者の足を止めたい箇所にだけ使われます。二ページに広げたものが見開きです。
- エスタブリッシングショット — エスタブリッシングショットは、場面の場所と人物の配置を示す引きのコマです。寄りに入る前にこれを置かないと、読者は続く寄りのコマを一つの空間に並べられなくなります。