間白(ガター)
別表記: ガター, gutter, コマ間, まじろ, コマとコマの間, コマの間隔
間白は、コマとコマの間の空白です。読者はその空白で2つの絵の間に何が起きたかを補完するため、間白の広さがそのまま飛ばした時間の量と、一拍をどれだけ持たせるかを決めます。
仕事をしているのは読者
振りかぶった拳を見せ、次に床に倒れた身体を見せる。殴る瞬間は誰も描いていません。読者が描いて います。2つのコマの間の白い帯の中で。スコット・マクラウドはこれを closure(closure=補完)と呼びました。マンガが異様に経済的でいられる理由がこれです。最も 暴力的で、最も感情が動き、最も描くのに金がかかる瞬間は、たいてい描かなかった瞬間です。
ここから実務上の帰結が出ます。動作の全段階を描いても分かりやすくはなりません。遅く、鈍く なるだけです。途中を切り、間白に預けたほうが、その一拍は強く着地します。
広さは時間
紙のマンガでは、段と段の間(上下のアキ)を10mm前後、同じ段の中のコマ同士(左右のアキ)を 3〜5mm前後に取るのが標準です。上下を広く、左右を狭く——この差そのものが、「1段を右から左へ 読み切ってから下へ降りろ」と目に指示しています。間白の広さは指示であって、装飾ではありません。
狭めればコマは同時的に、同じ一秒から切り出した連写のように感じられます。広げれば呼吸が入り ます。
縦スクロールでは、間白の単位がミリメートルではなく画面に なります。見せ場を持たせるウェブトゥーンの作家は、落ちのコマの前に600〜1500pxの無地を置いて、 読者に「何もない」をスクロールさせます。この空白がこの形式で最も強い緩急の道具で、しかも 作画コストはゼロです。
間白・断ち切り・ノド
紛らわしいものが3つあります。
- コマ間の間白 — ここで扱っているもの。演出の道具です。
- ノド — 本の綴じ側の死に領域。厚い無線綴じは内側の余白を飲み込みます。顔と吹き出しを ここに置かないこと。
- 断ち切り — 絵をページの端まで走らせること。その辺の間白が消え、 コマが境界を失います。
まったく別の問題です。1つ目は緩急、2つ目は製本、3つ目はコマの情感の話です。
意図的に使う
- 均一な間白は中立で統制された印象になります。手続き的な話、会話主体の話に向きます。
- 間白をゼロにして2コマを接すると、1つの連続した瞬間として感じられます。部屋をゆっくり 舐めるカメラに有効。
- 黒い間白にすると、その連なりのトーンが丸ごと変わります。ホラーとノワールが多用し、 圧が迫ってくる感じとして読まれます。
- 不揃いで傾いた間白は混乱の合図です。戦闘の3ページには使えても、30ページ使うと読者は 筋を見失います。
関連用語
- コマ — コマとは、物語の一瞬を切り取った枠付きの一画のことです。枠が「その瞬間はここで終わる」と示し、コマの面積が読者の滞在時間を決め、コマの並びがそのまま時間の流れになります。
- コマ間の転換 — コマ間の転換とは、あるコマから次のコマへ渡るときに時間・空間・被写体がどれだけ動くかという関係のことです。スコット・マクラウドは瞬間・動作・主体・場面・側面・無関係の六種に分類しました。
- 縦スクロール — 縦スクロールとは、ページをめくらずにスマートフォンを下へスクロールして読む、一本の縦長の連続した紙面として組まれた形式です。ウェブトゥーンの標準形で、コマとコマのあいだの空白がテンポを決めます。
- 塗り足し(裁ち落とし) — 塗り足しは、仕上がり線の外側まで絵を伸ばしておく余白のことです。断裁位置は数ミリずれるため、仕上がり線ぴったりで絵を止めると紙の端に白が出ます。日本の原稿用紙では仕上がり枠の外に3mm前後の塗り足し幅が取られています。