塗り足し(裁ち落とし)

別表記: ブリード, bleed, 裁ち落とし, 断ち切り, フルブリード

塗り足しは、仕上がり線の外側まで絵を伸ばしておく余白のことです。断裁位置は数ミリずれるため、仕上がり線ぴったりで絵を止めると紙の端に白が出ます。日本の原稿用紙では仕上がり枠の外に3mm前後の塗り足し幅が取られています。

枠は1本ではなく3本

印刷するページには同心状に3本の境界があり、これを取り違えることが初めての印刷で失敗する最大 の原因です。原稿用紙に最初から印刷されている線が、そのまま3本に対応しています。

  • 裁ち落とし線(塗り足しの外側) — 仕上がりより約3mm外。絵はここまで伸ばします。大事な ものは置きません。捨てられるために存在する領域です。
  • 仕上がり線 — 刃が落ちる「はず」の位置。完成したページの端です。
  • 内枠(基本枠) — 仕上がりより内側。セリフ、顔、吹き出し、 ノンブルはこの中に収めます。

B5の同人誌なら、仕上がり182×257mm、内枠がおよそ150×220mm、外側に3mmの塗り足し、という 構成が標準です。仕上がり線と内枠の間に余裕を取るのは、断裁が正確ではないからです。数百冊 積んで裁てば1〜2mmは動くので、仕上がり線ちょうどに引いた囲み罫は、あるページでは太く、次の ページでは消えて戻ってきます。ページの周囲に細い飾り罫を入れるのが印刷で悪手なのも同じ理由 で、断裁の誤差を1ページずつ宣伝することになります。

なぜ伸ばすのか

絵を仕上がり線ぴったりで止めると、刃が外側に流れた分だけ紙の白が糸のように残ります。3mm 伸ばしておけば、刃がどこに落ちても絵の内側に着地します。逆にいえば、塗り足しに描いたものは 一切見えない前提で構図を組む必要があります。

演出としての断ち切り

断ち切ったコマはその辺の間白を失うので、読者は そこに枠があることを知覚しなくなります。絵は境界のないものとして読まれ、その瞬間が紙の外へ 続いている感覚が出ます。ホラーと大きなアクションが多用する理由です。静かな会話では普通は 使いません。枠を失うことは、時間がコマ単位で刻まれている感覚も同時に失うことだからです。

全面断ち切りの大ゴマは分かりやすい例ですが、1辺だけ断ち切る—— 人物が落下していくコマの下辺だけ抜く——ほうが効くことが多く、しかもレイアウト上のコストが ほぼゼロです。

デジタル前提なら話が変わる

画面でしか読まれない作品なら塗り足しは無関係です。刃も紙の端もありません。 縦スクロールにはそもそも概念がありません。

罠は、後から印刷することにした場合です。完成原稿に塗り足しを足すには、絵を拡大して気に入って いた構図を削るか、全ページの背景を手で描き足すかのどちらかになります。印刷の可能性が少しでも あるなら、1ページ目からキャンバスに塗り足しを含めて、文字は内枠に収めてください。描いている 間は無料で、後から足すと高くつきます。

印刷用の書き出しはCMYK・350dpi前後、線画は600dpi以上のモノクロ2階調にしておくと、 ペン入れの線がぼやけた灰色にならずに済みます。

関連用語

  • コマ — コマとは、物語の一瞬を切り取った枠付きの一画のことです。枠が「その瞬間はここで終わる」と示し、コマの面積が読者の滞在時間を決め、コマの並びがそのまま時間の流れになります。
  • 間白(ガター) — 間白は、コマとコマの間の空白です。読者はその空白で2つの絵の間に何が起きたかを補完するため、間白の広さがそのまま飛ばした時間の量と、一拍をどれだけ持たせるかを決めます。
  • 扉絵・見開き — 1ページ全体を一コマで使う見せ方のことです。一つの瞬間にページを丸ごと払うため、話の扉、初登場、場面で最も大きいビート──つまり読者の足を止めたい箇所にだけ使われます。二ページに広げたものが見開きです。
  • 縦スクロール — 縦スクロールとは、ページをめくらずにスマートフォンを下へスクロールして読む、一本の縦長の連続した紙面として組まれた形式です。ウェブトゥーンの標準形で、コマとコマのあいだの空白がテンポを決めます。

実際に使う