オノマトペ(擬音語・擬態語)
別表記: オノマトペ, 擬音語, 擬態語, onomatopoeia, 効果音, 描き文字
オノマトペは音や状態を音声で写し取る言葉です。日本語は実際の音を表す擬音語に加え、音のしない状態や質感を表す擬態語を持ち、しーんのように無音までも書けます。この層が英語には存在しません。
言葉としてのオノマトペと、絵としての描き文字
オノマトペは言語の性質です。ドキドキもガシャンも、マンガにあろうと小説にあろうと会話に あろうとオノマトペです。一方、写植や作画の側がページに載せるもの——形を与えられ、コマを またいで走る描き文字——は効果音のレイヤーで、独自の工程を持つ制作物です。
日常の会話では混同しても実害はありませんが、制作の話では別のものです。オノマトペはその語が 何であるか、効果音はページに何が載っているか。海外版の制作で問題になるのは常に後者 のほうです。
擬音語と擬態語
日本語はこの領域を少なくとも2つに分けており、2つ目に英語の対応物がありません。
- 擬音語 — 実際に鳴っている音。ドキドキ、ガシャン、ザーザー。
- 擬態語 — 音のしない状態・質感・様子。キラキラ、じろじろ、ふわふわ、そわそわ。
いちばん分かりやすいのはしーんです。無音のための音の言葉。マンガは静けさを絵の上に直接 書き込むことができ、読者は部屋が静まるのを聞きます。英語にはこれに当たる語がなく、そういう 習慣も育ちませんでした。訳者は斜体の silence… か、ナレーションか、あるいは何も置かないかを 選ぶことになります。
この在庫は膨大で、しかも生産的です——日本語話者は今も新しいオノマトペを作ります。マンガが これに強く依存しているのはそのためで、擬態語を1語コマに渡すだけで、英語ならナレーションで 述べるしかないムード・質感・テンポを運べます。
英訳で必ず壊れる3つのこと
- 対応する語がない。 キラキラは sparkle ではありません。sparkle は起きている現象で、 キラキラはきらめいている状態がどう感じられるかです。多くの訳で語の階層ごと落ちます。
- 文字が絵の一部になっている。 日本のマンガの効果音はコマに直接描き込まれるので、差し 替えるには下の絵を消して描き直すことになります。実務上の扱いは 効果音の項にまとめてあります。
- 長さと向きがレイアウトと喧嘩する。 縦長のコマを縦に流れるカタカナは、同じ大きさの 横組み英語には置き換わりません。空間そのものを設計し直すことになります。
逆向き——英語の作品を日本語にするとき——はたいてい楽です。英語のオノマトペは衝突音と物音を 中心とした小さく閉じた集合なので、受け皿のほうが広いからです。
自分で作るとき
量より具体性です。同じ骨が折れる音でも、バキッとミシはまったく違うことを伝えます。 ドーンはほとんど何も伝えません。材質に合わせて子音を選び——硬い衝突には破裂音、気体と液体 には摩擦音、響きには鼻音——大きさは描かれた形のほうに持たせてください。
そして、小さく細く描かれたこつは、大きなバンより不穏になり得ます。ページ上の大きさは 音量として読まれるので、張り詰めた場面で小さい音を選ぶこと自体が演出だからです。
関連用語
- 効果音(描き文字) — 効果音とは、吹き出しの外に置かれる音の文字表現と、それを作る制作工程を指す言葉です。マンガでは作画と同時にペンで描き込まれるため描き文字と呼ばれ、写植で組まれるセリフとは扱いが根本的に違います。
- 効果線(流線・集中線) — 効果線とは、動きを伝えたり視線を一点に集めたりするために引く線の集合です。被写体の後ろに並走する線は移動を、一点に収束する放射線は強調・驚き・衝撃を表します。前者が流線、後者が集中線です。
- コマ — コマとは、物語の一瞬を切り取った枠付きの一画のことです。枠が「その瞬間はここで終わる」と示し、コマの面積が読者の滞在時間を決め、コマの並びがそのまま時間の流れになります。
- 漫画(manga) — 日本語の漫画はコミック全般を指す普通の言葉ですが、英語の manga は「日本の様式で作られたコミック」という狭い意味しか持ちません。漫画・만화・漫畫は同じ二字を三か国語で読んだもので、語そのものには国も様式も含まれていません。