スクリーントーン
別表記: トーン, 網トーン, スクリーントーン, 網点, screentone
スクリーントーンとは、白黒原稿に貼って中間調を作るための、網点・線・グラデーションが印刷済みのシートのことです。元はカッターで切って貼り込む粘着フィルムでしたが、現在はほぼデジタルのトーンレイヤーとして扱われます。
塗っていないのに灰色に見える理由
マンガは一色のインキで刷られます。版にグレーのインキはないので、読者が見ている灰色はすべて、 個別には識別できない大きさの黒点が作る錯覚です。その仕掛けがトーンで、一定の大きさと間隔で 並んだ網点を目が平均化して濃度に見せています。
デジタルのエアブラシで作った灰色とマンガの灰色が別物に見えるのはこのためです。トーンの灰色には テクスチャがあり、境界が立ち、粗い紙でも潰れない。週刊誌の印刷が要求したのは、まさにそれでした。
トーンの数字を読む
従来のトーン番号も、それを踏襲したデジタルのトーン素材も、二つの数字で表記されます。 線数と濃度です。「60L 10%」なら1インチあたり60本の網点列、面積の10%が黒。網点の粒が 見える淡いグレーです。「85L 30%」はより細かく、より濃い。
実作業の目安:
- 線数はテクスチャの粗さを決めます。低いほど粒が見え、古典的・グラフィック寄りに読まれます。
- 濃度は灰色の明るさを決めます。1ページで使う濃度は三〜四段階に絞ること。わずかに違う灰色を 十一種類使えば濁ります。10%・30%・50%だけなら画面は読めます。
- 5%以下と70%以上は、印刷で飛ぶか潰れるかしがちです。濃すぎるトーンを使うくらいなら ベタにしてください。
誰もが一度はやるモアレ
線数の近いトーンを重ねる、トーンレイヤーを拡大縮小する、回転させる──いずれも干渉縞を生みます。 平らな灰色であるべき場所に、波打った帯が走る。防ぐための決まりごと:
- トーンレイヤーは絶対に拡大縮小しない。合う線数のものを選び直す。
- どうしても重ねるなら、二枚目を30度前後ずらす。
- 線画もトーンも600〜1200dpiの2値で作業する。300dpiのグレースケールではいけません。 網点には解像度が要り、足りないと印刷側のスクリーン線数と喧嘩します。
- 確認は実寸100%表示で。拡大表示では判断できません。
デジタルでも生きる手仕事
手作業時代の二つの技法は、タブレット上でも再現する価値があります。削りはカッターやナイフで トーンを引っ掻いて柔らかいハイライトを作る技。髪の流れる艶、頬の白飛びがこれです。 重ね貼りは二枚重ねて濃度を上げつつテクスチャをずらす技で、既にトーンが乗った面に落ちる影に 使います。
トーンは面と情緒のために使い、構造とコントラストはペン入れの 線の強弱とベタで作る。ベタが決まらないうちに貼ったトーンは、 ほぼ必ず画面を平坦にします。コントラストが必要としていた面積を、先に埋めてしまうからです。
関連用語
- ペン入れ — ペン入れは、下描きを消えない黒い線で引き直す工程です。どの輪郭を線にするか、線をどれだけ太くするか、どこをベタで潰すかを決めるのがペン入れで、ページの奥行きとコントラストはここで決まります。
- 線の強弱 — 線の強弱は、1枚の絵の中で線の太さを意図的に変えることです。太い線は手前に出て影や重さとして読まれ、細い線は奥へ引いて光や繊細さとして読まれます。色も影もない線画が奥行きを持つのはこの仕組みによります。
- コマ — コマとは、物語の一瞬を切り取った枠付きの一画のことです。枠が「その瞬間はここで終わる」と示し、コマの面積が読者の滞在時間を決め、コマの並びがそのまま時間の流れになります。
- 効果線(流線・集中線) — 効果線とは、動きを伝えたり視線を一点に集めたりするために引く線の集合です。被写体の後ろに並走する線は移動を、一点に収束する放射線は強調・驚き・衝撃を表します。前者が流線、後者が集中線です。