ネーム

別表記: ネーム原稿, ラフ, サムネイル, thumbnail, 下描きレイアウト

ネームとは、仕上げ作画の前にコマ割りと読みの流れを検証するための、ページのラフ設計図です。コマの形、おおまかな人物、実寸のセリフをページ単位で置きます。英語ではこの工程を thumbnail と呼びます。

ネーム・サムネ・絵コンテは別物

英語の thumbnail は二つの無関係なものを指していて、日本語ではそれが最初から分かれています。

  • ネーム — 制作物としてのラフ。ページを名刺大に縮めて数分で切り、コマをどこに置くかを 詰める作業。マンガ家が言っているのはこちらです。
  • サムネ — 配信物としての表紙画像。プラットフォームの一覧に並び、読者がタップする小さな絵。 WEBTOON や Tapas、各ストアでは「そもそも開かれるかどうか」を決める最大の要因で、専用の作法が あります。横80ピクセルで判別できること、顔を一つに絞ること、タイトルがスマホで読めること。
  • 絵コンテ — 映像のカット設計。単位はページではなくカットと秒数。

名前が英語で一つに潰れているだけで、片方の助言はもう片方にまったく転用できません。以下はネームの話です。

小さく描くことが機能である

ネームは意図的に小さく切ります。数センチ角では顔を描くことが物理的にできないので、残る判断は この段階で決めるべきものだけになります。コマはいくつか、どんな形か、どの大きさか、視線はどこから 入ってどこへ抜けるか。描き込みを省いているのではなく、不可能にしているのです。

その制約には副産物があります。読者が最初にページを見るときと同じ見え方ができる。誰も冷えた状態で コマを一つずつ読み始めたりはしません。まず一瞥で全体の形を受け取り、その一瞥がどこを先に見るかを 決めています。ネームは、読者と同じものを見ている唯一の工程です。

ネームを切りながら確認すること

  • 視線誘導。 目がたどる経路を鉛筆でなぞる。間白で折り返したり 止まったりするなら、悪いのは読者ではなくレイアウトです。
  • 大きさ=強調。 ページで最も大きいコマが、読者にとって最も重要なコマになります。それが 本当に最重要かを確認する。
  • めくりの位置。 めくる直前の最後のコマは「めくりたい」と思わせる必要があります。そこに 判明を置くと平坦に落ちます。
  • 吹き出しの面積。 吹き出しを実寸の空の形として置く。 レイアウトは作画より写植で破綻します。
  • 見開きをまたいだ反復。 同じ三段組が三ページ続くと、一枚ずつは問題なくても単調に読まれます。

縦スクロールの場合

縦スクロールのウェブトゥーンでは、ページではなく一本の長い列 として切ってください。構成の単位は読者が手に持っている画面です。ページとして切ったレイアウトは スクロールに耐えません。

もし誰かがマンガの仕事で「ストーリーボード」を渡してきて、それがページの切れ目のない一本の帯に なっていたら、受け取ったのはカットであってレイアウトではありません。ページ設計の作業はまだ 丸ごと残っています。

関連用語

  • 絵コンテ — 絵コンテとは、仕上げ作画に入る前にショット・演出・尺をラフな絵で設計する工程です。もとは映像の用語で、一枚が一カットにあたります。マンガで同じ役割を担うのはネームで、単位はカットではなくページになります。
  • コマ — コマとは、物語の一瞬を切り取った枠付きの一画のことです。枠が「その瞬間はここで終わる」と示し、コマの面積が読者の滞在時間を決め、コマの並びがそのまま時間の流れになります。
  • 間白(ガター) — 間白は、コマとコマの間の空白です。読者はその空白で2つの絵の間に何が起きたかを補完するため、間白の広さがそのまま飛ばした時間の量と、一拍をどれだけ持たせるかを決めます。
  • 扉絵・見開き — 1ページ全体を一コマで使う見せ方のことです。一つの瞬間にページを丸ごと払うため、話の扉、初登場、場面で最も大きいビート──つまり読者の足を止めたい箇所にだけ使われます。二ページに広げたものが見開きです。
  • 脚本(シナリオ) — コミックの脚本とは、絵にするための設計文書です。物語をページ番号とコマ番号に分解し、各コマに何が写るかを記述し、そこに入るセリフ・ナレーション・効果音を列挙します。

実際に使う