絵コンテ
別表記: コンテ, ストーリーボード, storyboard, 콘티
絵コンテとは、仕上げ作画に入る前にショット・演出・尺をラフな絵で設計する工程です。もとは映像の用語で、一枚が一カットにあたります。マンガで同じ役割を担うのはネームで、単位はカットではなくページになります。
何のための工程か
絵コンテが存在する理由は、構造上の失敗をまだ数分で直せるうちに見つけるためです。ペンを入れた後で 「見せ場を一拍うしろに動かす」となれば描き直しですが、コンテ段階なら箱を一つ×で消すだけで済みます。 この工程の作法はすべて、その経済から導かれます。
絵は意図的に下手でよい。棒人間、車は四角、カメラの動きは矢印。一枚に一、二分以上かけているなら、 それは役目を終えて絵になり始めています。
日本語は英語より区別が細かい
英語の storyboard は二つの近い意味を抱えていて、そこが混乱の原因になっています。日本語は最初から 語を分けています。
映像(実写・アニメ)の絵コンテは、一枚が時間の中の一カットです。カットは線状に並び、 カメラワーク、セリフ、多くの場合は秒数が書き添えられます。ページという入れ物はなく、容器は タイムラインです。アニメではこれを繋いでビデオコンテにし、実音に対してテンポを検証します。
**マンガのネーム**は、同じ工程をページの盤面で行います。読者が 受け取る単位がページだからです。ネームが解くのはコマの大きさ、紙面上の位置、見開きの中を視線が どう渡るか──映像のコンテが一度も直面しない構成の問題です。逆にネームに尺の欄はありません。 コマの長さは、読者が見ている時間そのものだからです。
韓国のスタジオは映像式のボードを**콘티(コンティ)**と呼び、やはり別語として扱います。マンガを 最も多く生産している言語が二つの概念を分けているのは、英語でも分けたほうがよいという十分な 論拠です。
ネームは工程上の決定点である
日本の連載では、担当編集がネームを通してから仕上げ作画が始まります。つまりネームは下書きでは なく、スケジュール上の本当の意思決定点です。ここで通らなかったものは、どれだけ上手く描いても 載りません。AI生成のワークフローを組むときも、承認の門をここに置いてください。仕上がった絵に 対して構造の判断を下すのは、いちばん高くつく順番です。
実務上の助言
一話ぶんを全部コンテしてから、どれかを仕上げること。最もよくある事故は、三ページ切って、気に入って、 描いて、九ページ目で「この話は別の入り方が必要だった」と気づくパターンです。 ビートシートから始めて出来事の並びを先に確定させ、コンテには一つの 問いだけを答えさせる──読者は迷わずにビートからビートへ渡れるか。
セリフは、コンテの時点で実際の文字数で置くこと。空の状態では成立し、吹き出しが入った瞬間に 破綻するレイアウトは、ページが描き直される最大の原因です。
関連用語
- ネーム — ネームとは、仕上げ作画の前にコマ割りと読みの流れを検証するための、ページのラフ設計図です。コマの形、おおまかな人物、実寸のセリフをページ単位で置きます。英語ではこの工程を thumbnail と呼びます。
- 脚本(シナリオ) — コミックの脚本とは、絵にするための設計文書です。物語をページ番号とコマ番号に分解し、各コマに何が写るかを記述し、そこに入るセリフ・ナレーション・効果音を列挙します。
- ビートシート — ビートシートは、物語の出来事を1行ずつ順番に並べた一覧です。ページ割りやコマ割りの前に書き、何がどの順で起きるかを先に確定させることで、構成の穴を完成原稿ではなくリスト上で見つけられるようにします。
- コマ — コマとは、物語の一瞬を切り取った枠付きの一画のことです。枠が「その瞬間はここで終わる」と示し、コマの面積が読者の滞在時間を決め、コマの並びがそのまま時間の流れになります。
- エスタブリッシングショット — エスタブリッシングショットは、場面の場所と人物の配置を示す引きのコマです。寄りに入る前にこれを置かないと、読者は続く寄りのコマを一つの空間に並べられなくなります。